相続人でない人に財産をあげることができる?

 遺言がなければ、被相続人(亡くなった方)の財産は法定相続人が相続しますが、遺言によって被相続人が自分で財産の承継者を決めて与えることを遺贈といいます。これは、人の生前における自由な財産の処分の延長として、その人自身に死後の財産の行方も決定させようする制度です。遺贈を受ける人を受遺者と呼びますが、受遺者は相続人でも相続人でなくてもかまいません。したがって、息子の嫁や友人など相続権がない人にも財産をあげることが可能です。
遺贈には特定遺贈と包括遺贈の2種類があります。特定遺贈は「自宅の土地建物を遺贈する。」というように具体的な財産を示して行う遺贈です。また、包括遺贈とは「財産の3分の1を遺贈する。」というような割合を示して行う遺贈です。包括遺贈の場合、受遺者はプラスの財産だけではなく、債務も承継します。つまり、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を承継することになります。なお、特定の相続人への遺贈は特別受益にあたります。次回は、特別受益についてです。

遺言は必要なのか?

 もちろん遺言がなくても円満に相続手続きが進むケースは多々あります。しかし、遺言がなかったために、それまで仲の良かった家族が悲惨な相続争いを繰り広げるケースがあることも事実です。以下のような方々にはとくに遺言を残されることをお勧めします。

・夫婦の間に子どもがいない
⇒ 遺言がないと親や兄弟姉妹が相続人となり配偶者が遺産の全部を相続すること
ができません。

・よく尽くしてくれた嫁に財産をあげたい
⇒ 嫁は相続人ではないので、相続することはできません。

・長年連れ添った妻がいるが婚姻をしていない
⇒ 相続人となれるのは法律上の配偶者だけです。このままでは妻は相続できま
せん。

・事業を継ぐ息子に事業用の財産を相続させたい
⇒ 事業を継ぐ息子が事業用財産を相続できるとは限らず、事業の継続が難しくな
る恐れもあります。

公正証書遺言のメリット・デメリット

公正証書遺言は、遺言者伝えた内容に基づき公証人が遺言を作成します。

メリット
① 形式や内容の不備により無効となる恐れがない
② 家庭裁判所による検認が不要である
③ 偽造、変造、隠匿の恐れがない

デメリット
① 費用がかかる
② 証人とともに公証役場に出向く手間がかかる
③ 証人から遺言内容が漏れる恐れがある

なお、栃木県北部の公証役場は大田原市役所の目の前にあります。

自筆証書遺言のメリット・デメリット

自由に作ることのできる普通方式の遺言のなかでも、とくに制約の少ないものが自筆証書遺言です。自筆証書遺言は文字どおり自分の手で書く遺言です。

メリット
① ほとんど費用がかからない
② 遺言の存在や内容を秘密にできる
③ ひとりで手軽に作成できる

デメリット
① 偽造や変造がされやすい
② 形式や内容の不備により無効となる恐れがある
③ 遺言書が発見されなかったり、隠匿されたりする恐れがある
④ 家庭裁判所での検認が必要なので、遺言の執行までに手間がかかる

押印もれなど些細なミスで無効になってしますことまありますので、自筆証書遺言をご検討されているかたは、お気軽にご相談下さい。
次回は、公正証書遺言のメリット・デメリットについて説明いたします。

遺言にはどんな種類があるの?

遺言の方法は法律で決められており、これに従ったものでなければ効力がありません。遺言の種類には下記のものがあります。

普通方式・・・自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言

特別方式・・・危急時遺言・一般の臨終遺言、船舶遭難者の遺言
隔絶地遺言・伝染病隔離者の遺言、船舶中にある者の遺言

特別方式とは危険が迫っているときなど特殊な状況下でなされるものです。一般的に用いられているのは普通方式の自筆証書遺言と公正証書遺言の2つです。自筆証書遺言は文字どおり自分の手で書く遺言です。公正証書遺言は遺言者が伝えた内容を公証人が文書にする遺言です。次回は、自筆証書遺言のメリット・デメリットについて説明いたします。


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