相続と胎児

権利や義務の主体となることができる資格のことを民法では『権利能力』と呼んでいます。この権利能力は出生と同時に発生します。つまり、原則としてまだ出生していない胎児に権利能力は認められません。しかし、相続だけは例外として、胎児は生まれたものとみなされ相続権が認められます(民法第886条)。

よって、胎児を含む相続人全員のために法定相続分に基づく相続登記をすることができます。しかし、胎児の出生前においては、相続関係が未確定の状態であるので、胎児のために遺産分割やその他処分をすることはできません。なお、登記名義は『亡A妻B胎児』となり住所は母親の住所となります。その後、胎児が無事生まれてきた場合には、所有権登記名義人氏名変更をする必要があります。胎児が亡くなってしまった場合には、所有権の更正(持分更正)をする必要があります。

相続人が誰もいない場合

相続人が誰もいない場合とは、戸籍上の相続人全員が存在しない場合や戸籍上の相続人はいるが、全員が相続放棄をした場合などがあります。民法上、相続人が誰もいない場合には、相続財産法人が成立することになります。実際には相続財産管理人が選任され財産を管理することになります。

  1. 相続財産管理人選任
  2. 相続財産管理人選任の公告(1回目の相続人捜索の公告)
  3. 債権者・受遺者に対する債権申 し出の公告 (2回目の相続人捜索の公告)
  4. 相続人捜索の公告 (3回目の相続人捜索の公告)
  5. 相続人不存在の確定
  6. 残余財産の国庫帰属

なお、相続人が誰もいない場合には、被相続人と一緒に生活をしてた方や被相続人の療養看護に努めた方など、特別な関係にあった方は特別縁故者として、相続財産の分与を請求できる場合があります。

戸籍上では相続人が存在するが、その方が行方不明や生死不明の場合は、不在者・失踪の制度を利用していくことになります。 相続人に行方不明者がいる場合

相続と同時死亡

人が亡くなると相続が開始します。複数の方が同一事故で死亡し、その死亡時期の前後が不明である場合、相続人の順位や範囲について問題が生じます。

そこで民法は数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定することとしています(同時死亡の推定・民法第32条の2)。その効果は、相続が生じないということです。『同時死亡の推定』は、相続についての争いをなくすための規定です。

なお、同時死亡の推定の効果は推定にすぎないから、生存又は同時に死亡したとされた時期と異なる時期に死亡したことが証明できれば法的効果を覆すことができます。

 

 

生前贈与と相続時精算課税制度

相続時精算課税とは、65歳以上の親から20歳以上の子に贈与する場合に、通算で2500万円までの贈与について贈与税が非課税となり、それを超える部分に一律20%の贈与税がかかるという制度です。将来、相続が発生した時点で、相続財産に贈与額を合算して相続税の形で精算することになります。

相続時精算課税を選択しようとする場合には、最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に納税地の所轄税務署へ「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。

相続時精算課税は、110万円の基礎控除がある暦年課税との選択となり、一度相続時精算課税を選択すると暦年課税に戻ることはできませんのでご注意下さい。

掲載内容は相続時精算課税について概要を説明しております。税金についてもっと詳しい情報が必要な方は税務署・税理士さんへお問い合わせ下さい。

生前贈与と暦年課税

暦年課税とは、贈与税の原則的な課税形態です。1月1日~12月31日までの1年間の間に贈与により受け取った財産の価額を合計し、その合計額から基礎控除額110万円を差し引いて、その残額に税率をかけて贈与税額を算出します。

この基礎控除110万円利用して子どもなどに110万円の贈与を10年間行うと1,100万円を無税で贈与することができます。

注意点として、税務署の税務調査により毎年110万円を10年間贈与している場合、もともと最初の年に1,100万円を贈与するつもりだったとみなされて1,100万円に対する贈与税を指摘される可能性があります。このような事態を避けるためには、契約書を作成する、毎年の贈与する金額を変える、毎年贈与する時期を変える、現金の贈与の場合には銀行振り込みにする、基礎控除を上回る金額を贈与して贈与税の申告をする等の工夫も必要となります。

贈与できるのは現金に限られず、土地や建物などの不動産も贈与することができます。相続税対策を考えている方は、不動産を贈与することもご検討下さい。なお、不動産を贈与した場合には、名義変更登記(所有権移転登記)が必要となりますので、お気軽に相談下さい。 ⇒ ご相談の流れ

掲載内容は暦年課税について概要を説明しております。税金についてもっと詳しい情報が必要な方は税務署・税理士さんへお問い合わせ下さい。

 

 


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